第1回 生活をマネジメントしよう!

鈴木 真由子(大阪教育大学 教授)

更新:2016-03-29

 私は今、家庭科の教員養成に関わっています。2014年4月からは、附属平野中学校の校長職も兼務しています。子ども扱いすれば子どもの顔で甘えてくるのに、大人として接すると精一杯背伸びして大人として振る舞おうとする。そんな、面白くて難しい中学生に囲まれて、日々慌ただしく過ごしています。
 研究分野は、家庭科教育と生活経営です。家庭科教育では、主に家庭科の授業設計や指導方法、カリキュラムなどを研究しています。こちらは、何となく想像していただけるのではないかと思いますが、「生活経営」はいかがでしょう?イメージが思い浮かびますか?
 コラムを担当するにあたり、まず、生活の経営(マネジメント)がなぜ必要か述べたいと思います。少し硬いお話になりますが、ご容赦ください。

 生活経営では、生活の主人公である“人”を軸にマネジメントを考えます。結婚、子育て、介護などの場面で、パートナーや親子といった人間関係をどのように創り、維持し、調整するのかが課題となります。その際、鍵になるのが生活資源です。
 生活資源とは、生活に役立つ、あるいは不可欠なもの全てを指します。例えば、物やサービスで考えてみれば、「スマホがないと生きていけない」人は少なくないでしょう。「保育所の送迎には自転車が不可欠」かもしれません。他にも、「近所にコンビニができて便利」だったり、「公立図書館の絵本が充実」していて嬉しかったり、「困ったときには保育ママ」に助けてもらったり。公共の施設や人は生活資源の大切な一部ですし、お金や時間、情報なども同じです。

 さて、暮らしの中で“幸せ(≒満足)”の度合いを一番大きくするには、生活資源をどのようにマネジメントするのが合理的でしょうか?生活資源の多くは有限です。それらをどう使えば家族のだれもが満足できて、家族としての幸せの度合いが大きくなるのか、家族それぞれの状態に基づいて考える必要があります。ここに、生活をマネジメントする意味があると言えるでしょう。

 生活資源の中で何を大事にするのかは、人によって異なります。「価値観」が違えば、経済的な暮らしを重視するのか、時間的なゆとりを必要と考えるのか、さまざまな選択が想定できるでしょう。同じ人でも、状況によって優先順位が変わります。
 何かがうまくいかないと感じていたり、何となく不満や不安があったりしたら、生活資源を見直してみることが大切です。リストアップしてみると、課題が見えやすくなります。使えるはずの生活資源が活用できていなかったり、存在に気づいていなかったりするのかもしれません。生活資源の使い方や配分の仕方が偏っていることも考えられます。改善点がはっきりしたら、生活資源の再検討です。何を、どこに、どれだけ、どのように使うのが合理的か、家族で検討してみましょう。

 第2回以降は、生活資源の中で、お金、時間、情報のマネジメントについて、具体的に述べる予定です。

 

執筆者

  • 鈴木 真由子
  • 大阪教育大学 教授
  • 【学歴】
    ・1985年3月 静岡大学教育学部 卒業
    ・1989年3月 静岡大学大学院教育学研究科
             修了 教育学修士
    【専門】 
     家庭科教育・消費者教育・生活経営
    【社会的活動】
    ・大阪府消費者保護審議会委員(2013年~)
    ・大阪市平野区区民会議副委員長(2015年~)
    ・日本家庭科教育学会理事(2013年~)
    ・日本消費者教育学会理事(2013年~)
  • 関連WEBページ:http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~kasei/family/family.htm
  • ふぁみなび:大阪教育大学附属 平野中学校紹介ページ