あそびは ぼくらの自己実現①

弓削 任代(NPO法人 こどもNPOセンターいずみっ子 理事長)

更新:2016-03-22

キャンプにヒーローは要らない

「せーの!ピッ」
キャンプを迎えるまでのグループワークで、あちこちの班から歓声があがる。
2日目のキャンプでの暮しをデザインするため、子どもたちは自分のアイデアをカードの書くことで、自分は何を思う人なのかをまずは自分に問い、他者の考えを知り選びとる。「せーの!ピッ」で自分の推すカードを指差すのは、異年令の集団の中で、誰もが自分の考えを表明することを可能にする仕組みだ。


家族のように過ごす班の中で、班という単位の集合体である集団の中で、人が関わって生きていくために必要なルールを自分たちで制定する時、あるいは各々の異なる考えを持つ個の集団で、それでも一つのものを選びとらなければならない時、どう互いの折り合いをつけていくのかを、いく度もいく度も繰り返す。
そうして選びとったある日のメニューが、豪華焼き肉の隣がうどんであったり、どうしても高級ブランドの牛肉入りのカレーを食べたくて、予算内に納めるためには、あとの食事はお茶漬けのみであったり、夜中にお腹がすいて、どうするかを協議した結果、次の日用のサンドイッチの耳だけは食べて良し!とするとか、班名の焼きソバにちなんで、キャンプ中の全ての食事を焼きソバのバリエーションに挑むとか。食べることに真剣なエピソードには事欠かない。
中学生、高校生、大学生、若い社会人から成るリーダーチーム。彼らは、小学生とのグループワークの進行から企画の立案など、キャンプを迎える7月の数ヶ月前から、キャンプ漬けの日々を過ごす。


いずみっ子のキャンプに初めて来てまず面食らうのは、手強い小学生たちとがっつり寝食を共にして、子どもたちにまみれることだ。ゲームリーダーをしたり、ファイヤーマスターをしたりとは、全く質を異にする事態が彼らを襲う。生まれながらにリーダーなんていない。リーダーという役割は、集団の中から生まれる。あるいは獲得していくものだ。子ども集団に、リーダーという役割で迎え入れられないと関わることができないおとなにならないことを願う。
非合理な、必然性の無い時間をどう彼らと楽しむかは、机上で練っていてもわからない。
初参加の学生の「休憩が無いことに堪えられない。」の言葉に虚を衝かれたことがある。人と在る時、人との関わりに定められたオフは無い。在りながらにして人との間合いをおしはかる問答と常に隣席している。ましてや子どもと在る時は…。
知らずして親になることで、しんどさを抱え込む話は、不幸にして後を絶たない。
生きているエネルギーに富んだ幼き人と共に在ることで、若い世代が得る体験は、現代社会に不可欠であると痛感する。
加えて彼らは活動の中で、しんどさは抱えこむよりも、仲間と解決した方がより良い結果を得ることを知る。
誰もが自分のストーリーを紡ぐかけがえのないひとりひとり。さて、今年はどんな出会いをするのだろう。
キャンプにヒーローは要らない。

事前に班で話し合って、遊ぶことも食べることも決める!

自分たちで創る夏の2泊3日

 

執筆者

  • 弓削 任代
  • NPO法人 こどもNPOセンターいずみっ子 理事長
  • 武庫川女子大学文学部卒
    特定非営利活動法人 こどもNPOセンターいずみっ子理事長
    地域子育て支援拠点事業いずみ・エンゼルハウス・府中設立
    和泉市親学習リーダー協議会代表
    和泉市こども子育て会議委員
    子どもと本を読む会青い鳥メンバー
  • ふぁみなび:NPO法人 こどもNPOセンターいずみっ子紹介ページ