電車で子どもがぐずったら 専門家が教える親が取るべき行動(2) さりげなく周囲に降車駅を伝達

弘田 陽介(福山市立大学大学院・教育学研究科准教授)

更新:2016-08-19

0~2歳のお子さんには、「静かに」とか「ここは電車なのよ」という注意は逆効果です。注意しても、その言葉の意味を理解して静かにしてくれることはまずありません。したがって、別の方法を「あの手この手」と使っていかねばなりません。

 まずは本当に小さいお子さんでしたらベビーカーから出して、抱っこでなだめる。通常、家庭で行っているような形であやしてあげてください。これで泣き止まなければ「お腹が空いた」「おしめを換えてほしい」などが考えられますが、約束の時間も迫っていたりすると一旦下車して子どもの要求を叶えてあげるというのも難しいですね。

 しかし、車中のほかの方々も、抱っこして、懸命になだめている保護者の姿を見ると、子どもがうるさいなんて言えませんよ。また、保護者の方も「▲▲▲駅で降りるからね、もうちょっと待ってね」と子どもに話しかけながら、周囲の方にも降着駅をさりげなく告げて、安心感を与えるとよいと思います。

 2~3歳になってくると、ある程度、子どもも親の言葉を理解するようになってきます。泣いている場合の不満もある程度、親も理解できます。ただその不満に対して、保護者が「なんでそんなことで泣くのよ」とか突き放しても逆効果です。

 したがって、不満から上手に目を逸らす作戦を取らなければなりません。「電車着いてから、デパート行こうか」とか「今日は、お友達の■■ちゃんに会えるねぇ」など、ともかく楽しいことを連想させるような言葉がけが必要です。ぐずぐずしていても、話しているうちに子どもは少しずつ不満を忘れていきます。

 また、こういう時には少し甘やかして、「飴」をなめさせるのも1つの手です。もちろん、これは車中でお菓子をあげるのではなく、降りてから「●●●食べようか」「欲しかったあの○○○は東京駅のなかに売ってるかな」など楽しいことに子どもを誘導していきましょう。

 もちろん過度な甘やかしは禁物ですが、一度電車に乗ってお出かけして何か買ってもらったりした楽しい経験をしていると、その後もその連想が働いて、電車移動も好きになってくれるかもしれません。

執筆者

  • 弘田 陽介
  • 福山市立大学大学院・教育学研究科准教授
  • 大阪市出身。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了(教育学博士)。
    現在、福山市立大学大学院・教育学研究科准教授。
    専門はドイツ教育思想(18世紀後半~、カント、啓蒙主義、神秘主義)、実践的身体教育論(整体、武術、プロレスなど)、子どもと保育のメディア論(アートや鉄道趣味など)。
    著書として、『近代の擬態/擬態の近代』、『子どもはなぜでんしゃが好きなのか』の他に、鈴木晶子編『これは教育学ではない』(冬弓舎、2006)、『教育文化論』(放送大学、2005)にも寄稿。雑誌『日経Kids+』やNHK「あさイチ」毎日放送「ちちんぷいぷい」、朝日放送「キャスト」などでは独自の鉄道文化論が紹介されている。
  • ふぁみなび:学校法人 城南学園紹介ページ