「上手な叱り方」

徳谷 章子(NPO法人ハートフレンド 代表理事)

更新:2016-09-16

「ちょっとした子育てのコツ紹介」の3回目です。

「毎日、叱ってばっかりです!」ほとんどの保護者は、そう話されます。

「早く宿題しなさい。何度いったらわかるの?」「早く服を着なさい。」「早く食べて!」「早く、早く、ちゃんとしなさい」今から、30年ほど前、子どもが3人いた我が家では、毎朝が戦争のようでした。夏休みなどは、もう一日中、私の叫び声が響いていました。5年前に、ペアレントトレーニングを学び、「怒鳴ったり、たたいたりしない上手な叱り方」があると聞いたとき、信じられませんでした。悪いことをしたら叱るのは当たり前と思っていたので、今でも思っていますが、ついつい大きな声で怒鳴ってしまいます。

 先日、広場でおもちゃの取り合いがありました。取っ組み合いになりかけています。スタッフが動こうとしたとき、あるお母さんが、「あーあー、どうしたの?どうしたの?」と柔らかに二人の子どもの間にさっと入られました。子ども達は、一瞬、手が止まりました。その声があまりに明るかったのです。手が止まってから、お母さんが、とっさに、おもちゃを持って、「このおもちゃで遊びたいのね?一つしかないからどうする?」と言われたのです。子ども達は、それぞれの想いをぶつけてから、一人は、違うおもちゃで遊び始めました。「待てて偉いね。」「貸してあげて偉いね」周りのみんなが、子ども達を誉めました。
「困ったこと」を止める時には、大きな声で叱ったり、怒鳴ることは手早い方法です。でも、また、同じ「困ったこと」が繰り返されることが多くなります。なぜでしょうか?
子ども自身が、「困ったこと」に直面した時、「どうしたらいいか」が、怒鳴られるだけではわからないからです。遊びたいおもちゃで取り合いになったとき、「貸して」とか「いやや」とか、「待ってね」とか「あとで貸してね」「ありがとう」が言えたら、子どもどうしの争いにならないですよね。

「上手な叱り方」は、子どもが「困りごと」に出会ったとき、どうしたらいいかを教えることです。「牛乳をこぼした時」には、「これで拭こうね」と拭き方を教える。「幼稚園で友達を叩いてしまった時」には、まずは、「理由をきく」ことが大切です。子どもは、何か行動をするときには、必ず、理由があります。理由を聞いてもらうと嬉しいです。それから、「叩くことはいけないよね」「叩かないで、どうしたらよかったのかな?」と子どもと一緒に考える。そして、次に同じ場面になった時、子ども自身が自分の判断で「叩く」という行動を「言葉で伝える」に変えることができれば、「困った行動」は減っていきます。

 大人にとっては、とても根気が必要ですね。「上手に誉めるコツ」「上手に叱るコツ」は、すべて、親から子どもへの教育的トレーニングです。私達は、「わかりやすく話すコツ」を上手く使い「子どもへの関わり方」を変えることで、子ども一人ひとりの良いところを伸ばしていきたいですね。


 

執筆者

  • 徳谷 章子
  • NPO法人ハートフレンド 代表理事
  • 昭和30年生まれ。京都教育大学卒業後、中学校に勤務。結婚・出産を機に退職。平成13年から桑津子ども会連合会の会長を務める。子ども達のあそび場を創りたくて、平成15年、子ども会の母親15名と任意団体「ハートフレンド」を発足する。文部科学省の「地域子ども教室」を運営を経て、平成18年にNPOになる。地域子育て支援拠点を4か所と児童ディサービス・ハートフレンドを運営。高齢者対象の「おとなのてらこや」事業や遊びを通じて、世代間交流の推進にも力を入れる。出産から高齢者までの共生福祉のまちづくりを目指す。社会福祉士
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