子育てはあせらず、じっくり、たゆみなく

東藤 弥生(大阪成蹊短期大学附属こみち幼稚園 園長)

更新:2016-04-14

3月、年長児が幼稚園での生活を終え、保育修了証書を手に巣立っていきました。

また、年中児・年少児も4月からは一つ大きいお兄さん・お姉さんになることを楽しみにしてそれぞれの学年の生活を終えました。3月は、子供達の1年間、2年間、あるいは3年間の成長を振り返り、出会った当初の幼かった姿を思い出しながら、一人一人がその子らしく成長した姿を嬉しく、誇らしく感じる毎日です。
修了や進級というこの時期を、私たち大人は、一つの区切りとして捉えていますが、子供の育っていく道筋に区切りはなく、今、この瞬間も子供達は成長を続けています。「幼稚園修了までにはここまでできるように」とか、「年長または年中組になるまでにはここまでやれるように」など、目標達成的なことに目を向けてしまうと、できた、できていない、の見方になってしまいます。子供の成長は、できたかできていないか、ではなく、どこまで成長してきたのかを見なければならないと思っています。

幼児期には人として生きていくために大切なものが育まれていきます。それは、自分のことをすばらしい存在だと思う気持ちであったり、人としての優しさであったり、色々なことに興味や関心を持つ心であったりします。さらに幼児期はこのような育ちの芽生えの時期であり、その芽は、子供一人一人のペースで、休むことなくじっくりと育まれていくものです。子供達の成長(人としての成長)を、幼稚園生活の1~3年間の中で捉えるのではなく、もっと長期的な見通しの中で、「ここまで成長してきたね」という目で見ていきたいと考えています。

家庭生活の中でも、子供の成長を長い見通しの中で見つめ、子供の今ある姿の中に成長を見出し、満足し、子育ての喜びを感じていただけることを願っています。這えば立て、立てば歩めの親心で、知らず知らずのうちに、もっともっとと子供に期待を寄せ、急がせていないでしょうか?子供達はその子その子に合ったペースと確かな足取りで一歩一歩成長しています。幼児期の成長は目に見えにくいというのが特徴です。言動や形に表れていなくても、実は見えない土の中(心の中)では、栄養をしっかりと蓄えて芽生えの時を待っています。栄養は認めや励ましや見守りなど、こちらも目には見えないけれど家族から受ける、ゆったりと温かい愛情です。
急がば回れという言葉がありますが、子育ても同様に、健やかにすくすくと育つことを願えば願うほど、あせらず、じっくり、たゆみなく、子供と向き合っていきたいものですね。
 

執筆者

  • 東藤 弥生
  • 大阪成蹊短期大学附属こみち幼稚園 園長
  • 高槻市市立幼稚園教諭、大阪教育大学附属幼稚園教諭・副園長を経て2014年4月に大阪成蹊短期大学附属こみち幼稚園園長に就任 。
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